●「「2025年の崖」の現状は」
スキル標準キャリア開発コンサルタント 福嶋 義弘
今年は2025年、まさに2018年に経済産業省が公開した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で指摘された年です。
DXレポートは、日本がDXを推進するために経済産業省が必要な課題を提言する報告書です。(その後もDXレポートはシリーズとして公開されている)
このDXレポートでは、既存のレガシーシステムの老朽化、複雑化、ブラックボックス化が企業のDX化を阻害しており、このままだと2025年以降に予想されるIT人材引退やサポート終了(影響が大きいとされたのは、2027年に延期されたが、SAP ERP6.0が2025年にサポート終了の予定であった)により、最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があるということです。公開当時、業界に大きなインパクトを与えたと記憶している。もちろん、2025年は抽象的でDXを推進するにあたり、レガシーシステム問題を放置していると企業の競争力や業績低下に影響する経営課題との危機感をあおるキーワードだと理解している。
あれから7年が過ぎ、最近は「2025の崖」のキーワードはあまり聞かなくなった。このコラムを書くにあたり、どうなったんだろう思い、単純な疑問で現状を調べてみた。
経済産業省は、企業のDXに関する自主的取組を促す、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンを策定して経営者に働きかける「デジタルガバナンス・コード(旧DX推進ガイドラインを統合)」や自己診断ツール「DX推進指標」の公表、推進企業を認定する「DX認定制度」、「DX銘柄」などの制度を展開している。
しかし、取組んでいる企業は大企業が多く、中堅・中小企業のDX推進が課題であったが2021年より、中堅・中小企業等のモデルケースとなる優良事例を「DXセレクション」として発掘・選定している。
2025年の今、一部の先進的大企業では、モダナイゼーション、リプレース、リホスト、ハイブリットなど、レガシーシステムからの脱却やデータ活用基盤の整備が進んでいる。経営層が主体となり、DXを企業戦略の中心に据えるケースも増え、グローバル市場を視野に入れたデジタル改革が実践されている。
ただし、これらはごく限られた例であり、6割以上の企業が依然としてレガシーシステムは根強く残っており、部分的なデジタル化に留まっているのが現状です。
2025年5月に、経済産業省より「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」レガシーシステムモダン化委員会総括レポートで公開されている。このレポートは、現状把握とレガシーシステム脱却の施策について参考になる。
また、中堅・中小企業の「2025年の崖」は、深刻です。中小企業庁の調査によると、「DXの必要性を認識している」と回答した企業は約7割に上るものの、人的リソース不足、資金的制約、情報・知識不足から実際に具体的な施策を講じている企業は2割未満という結果が出ている。
まとめると、「2025年の崖」は現実化しつつあるが完全転落は避けられる可能性がある。なぜなら、「2025年の崖」についての認知度、崖を越える機運・取組は企業により差異はあるが進んできているからである。しかし、全企業で見るとまだまだ少ない。特に、中堅・中小企業では課題も多く難易度が高い。
また、データ活用が求められるDX推進を担うデジタル最新技術・クラウドネイティブ・セキュリティ対応など、求められるスキルセットを持つ人材が不足している。
併せて、レガシー技術を扱える技術者も減少してきており崖を越える刷新は急務である。しかし、この7年の推移をみると、今後もレガシー刷新は一気に進まないと予想されリスクは継続され「2025年の崖」は、「2027年の崖」や「2030年の崖」へとリスクは継続する可能性が高い。
以上