●『スキル標準の歴史とiCD & ITSS+ ~その3』

        (株)スキルスタンダード研究所 代表取締役社長 高橋 秀典

最新のスキル標準であるiCDやITSS+は、「企業」での活用が基本です。
これまでもITスキル標準、UISS、ETSSなど旧スキル標準についても、多くの企業が活用してきました。
これらスキル標準の策定経緯や活用について、振り返ってみたいと思います。
また、DX推進を見据えた活用方法についても深堀していきます。

【iCDの活用】

 ITスキル標準、UISS、ETSSの3スキル標準は、今まで発表されている事例からも、
企業活用を中心に使われてきたことは明らかです。
企業においては、それぞれビジネスモデルがあり、将来計画もビジネス目標も異なります。
よって、提供された固定枠の中にはめるような活用の仕方では、企業や組織自身の意志を反映することはできず、
有効に使えているとは言えません。
当初は、枠にはめることで簡単に人材育成や評価ができるという誤解があり、
IT企業の人材育成担当者が積極的に取り上げましたが、頓挫してしまう企業が多かったという事実があります。
ITスキル標準のCareer FrameworkやiCDのタスクディクショナリなど、
提供されたものを何も変えずにそのまま使ってしまうことなどがその失敗例です。
特に中小企業はその傾向が強く、一方大手はスキル標準を自社に合った形にカスタマイズして使ってきました。
昨今、さらにビジネス環境も大きく変わって、自社の独自性や競争力を向上させることが重要となりました。
その結果、固定化されたものを使うのは得策でないという判断をする企業も目に見えて増えてきたのは当然です。
まさに、自らの意志をもって組み立てるという考え方のCCSFやiCDが、
この点に応えるものとして各方面から評価を得たのも当然だと言えます。

【iCDの活用形態】

 iCDの活用形態については次の3通りがあります。
 (1)企業・団体・組織での活用
  ・組織力強化のための活用
    - 組織の持つべき機能・役割の可視化,及び組織設計
    - 役割分担,最適配置の明確化
    - 業務機能の把握と生産性や業務品質の向上を目的とした人材育成策の検討
  ・企業・組織戦略実現に向けた効果的な投資の実施
    - 優先順位の明確化,投資効果の把握  
  ・プロジェクト要員の割り当ての効率化  
  ・企業・組織目標と現状にあった人材育成計画の立案
    - IT人材の現状,強化すべきポイントの把握
    - 育成計画の検討
    - 適切な教育プログラムの選択
  ・キャリアパスの明確化
    - 目標とするキャリアを実現のためのスキル開発の明確化
    - キャリアチェンジを図る際の参照モデルとして利用

 (2)個人での活用
  ・IT関連スキルの把握
  ・自身の持つスキルと成熟度の把握
  ・各スキルの活用場面(タスク)の理解,または就業を希望する仕事に必要なスキルの把握
  ・目標とするスキル,その習得手段,到達確認の手段(資格,試験など)の明確化

 (3)教育機関での活用
  ・スキルディクショナリを基にした教育プログラムの企画・提供
  ・教育プログラムの評価

【「役割」の考え方】

 iCDは、タスク、つまり仕事や機能を中心に置いたコンセプトですが、使う側として一番身近なものが、
タスクを束ねた「役割」でです。
ITスキル標準・ETSSでは「職種」、UISS・CCSFでは「人材像」を、ドキュメント上での呼称として使ってきました。
一方、スキル標準を活用する側ではそれぞれを人材に当てはめて使うのをイメージすることが一般的でした。
「職種」は厳密に言うと、人や役割ではなく、技術領域をカテゴライズした言わば分類のようなものです。
ITスキル標準の初期の説明文では「職種は、いわゆる人材像や役割ではない」と明記されていましたが、
使う側ではあまり意識せずに、人材や役割と読み替えていたのが事実です。
その結果、会社の仕事の単位や組織の単位と合わないことが問題視されたのもうなずける話です。
一方で、「人材像」も実在の人物をイメージしてしまうことから、複数の仕事を掛け持ちしている人、
例えば設計とPMなどを一つの人材像で表現しようとしたため、色々な組合せのものが多数設定されてしまう結果になってしまいました。
そういった、環境や立場の違いでの異なる理解をなるべく無くしていかないと、人材育成の仕組みとしてうまく機能しません。
そこで、iCDでは共通した理解を促すために、今まで使ってきた「職種」や「人材像」という呼び方を改め、
「役割」に統一しています。
本来企業で一番使われるのは役割/ロールであるということからも、
大変現場感があり企業活動としての実態を伴った表現だと言えます。

以上をまとめると,iCD有効活用のポイントは次の通りです。

 ・人と役割は通常1:nで考える
  PMをやりながら設計も担当している、など。

 ・役割は育成できる単位とする
  余分なものを付加せず、例えばPMを育成する、という考えにたてること。
  もし、PM+設計など複数が合体したような役割設定になっているとすれば、育成のゴールが不明確になる。

 ・組織の枠を外してキャリアパスをデザインできる単位とする

~その4につづく 次回はiCDの限界について、またDX対応のITSS+について説明します。