●『ハイブリッド型雇用について』

        副業 個人ワーカー(事業人事戦略デザイン)但吉 英山

特定非営利法人スキル標準ユーザー協会(以下、SSUG)の
スキル標準キャリア開発コンサルタントの但吉(たじよし)です。

今回は、「ハイブリッド型雇用」について考察してみます。
私は、SSUGにおいて、コンサルタント交流会や情報交流委員会に参加し、
ジョブ型雇用、メンバーシップ型雇用、そしてハイブリッド型雇用について活発な
議論をさせて頂きました。
特に、三菱総合研究所が2021年12月に発表した研究レポート「『ハイブリット型』
雇用システムの構築に向けて」は、非常に示唆に富む内容でした。

メンバーシップ型は会社との勤続経験等に基づいて人材を評価し、
処遇する一方、ジョブ型は職務内容に基づいて評価・処遇を行うという、
それぞれ異なる特徴を持っています。
中間型は、メンバーシップ型とジョブ型の両方の側面をもつ雇用システムです。

三菱総合研究所の研究レポートでは縦軸に職務と能力の関係軸、
横軸に会社と個人の関係軸を設定した4つのワーク・ステージを設定し、
それぞれのワーク・ステージに前述の3つの雇用システムを割り当てています。
同レポートでは、3,000人の就業者へのキャリア感と企業と社員の関係意識に関する
アンケートデータよりクラスター分析から得られた六つの人材タイプを設定し、
4つのワーク・ステージに当てはめることにより、それぞれのタイプにあった
雇用システムの運用を組み立てることができるストラクチャーを構築しています。

ジョブ型の導入を検討している企業の方で、詳細な内容に興味がある方は、
下記URLから研究レポートを請求できます。
https://www.mri.co.jp/news/press/20211202.html

今回のコラムでは三菱総合研究所の研究レポートの内容とは別に、
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用、そしてハイブリッド型雇用について、
私なりの考察を行っていきます。
実は三菱総合研究所の研究レポートでの「ハイブリット型」雇用システムは、
3つの雇用形態をハイブリットに適用することを示しており、一般的には
ハイブリット型雇用とは、研究レポートの中間型雇用を示す場合が多いです。
そのため、これ以降は間型雇用をハイブリット型雇用として、
お話しすることになります。

メンバーシップ型雇用とは、勤続年数や会社への貢献度に基づいて
人材を評価・処遇する雇用システムであり、職務内容ではなく、
会社との長期的な関係性を重視する点が特徴といわれています。
そのため、勤続年数に基づく評価、年功序列、終身雇用といった特徴があります。

メリットは、従業員の帰属意識の向上、組織全体の安定性、長期視点での
人材育成などであり、デメリットは個人の能力発揮の機会が少ない、
組織の硬直化、人件費の増加などになります。
メンバーシップ型雇用では従業員の能力を勤続年数で評価していますが、
従業員ごとに能力や成果を型にはめないで評価しているとも解釈ができます。

ただ、こうした評価は評価者に提示される基準も定義しづらいため、
とても難しく妥当性も納得感も得にくいです。
実際の評価では、「これくらいの年次(経験年数)だったら、これくらい仕事が
できて、これくらいの成果が欲しい」という判断基準を現場マネージャーが現場
の従業員を観察測定して設定し、相対評価で「〇、△、×」などを付けています。
極論するとメンバーシップ型雇用における人材管理は組織の成果と従業員の状況
を塊で測定して、相対評価するという行為なのではないかと考えています。
こうした仕組みであるため、組織安定に貢献する一方で、個人の貢献が見えにくく、
個人の能力発揮の機会が少なくなるのです。

一方、ジョブ型雇用は職務内容に基づき人材を評価・処遇する雇用システムです。
私自身は、ジョブ型雇用とは因数分解によるモデリングによって成立していると
解釈しています。
ビジネスに必要な職務(オペレーション等)を洗い出し、ジョブ単位で取りまとめる
という行為は、ジョブという因子を設定し、ビジネスをジョブという単位でモデル化
する行為です。
そのため、ジョブごとに求める成果(リターン)も報酬(コスト)の試算しやすく
なり、要員ポートフォリオのコントロールもしやすくなります。

ジョブの専門性を高めるようになるので従業員の専門性は高くなります。
そのため、専門性が必要とされる業界、例えばIT業界、コンサルティング業界、
製造業とは相性がよいです。
しかし、ビジネスの状況変化により過剰なジョブが発生した際には、
ジョブ間での要員の再配置が難しいことも多く、大幅な人員整理が必要になる場合
もあります。
雇用流動性が低い日本で組織全体の安定性を求める場合は、先に述べるメンバー
シップ型雇用の方が対応しやすくなります。
ハイブリット型雇用はメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の要素を組み合わせた
雇用システムです。
それぞれのメリットを活かし、デメリットを補うことを目的としています。

メリットは、企業と個人の双方にとってメリットがある、柔軟性と安定性の両立、
人材の多様化に対応といった点が挙げられます。
企業は必要なスキルある人材が確保でき、個人は自分の能力を最大限に発揮する
ことができるとともに、変化に激しい現代のビジネス環境に対応し、多様な人材
ニーズに応えることができるということです。

デメリットとしては、2つの雇用システムの要素を組み合わせるため、設計が難しく
運用も複雑化する可能性が高くなります。
また、ジョブ型雇用では明確だった評価制度が不明瞭になる可能性が高くなり、
従業員の理解を得にくくなる可能性も高くなります。

私がハイブリット型雇用を設計する場合は、ジョブ型雇用のジョブ設計をベースに
しつつ、メンバーシップ型雇用の組織人材の分析、評価、相対化をデータとして
取り込み、従業員一人一人のジョブをカスタマイズできる仕組みになると思います。
具体的な話は長くなるので方向性だけになりますが、従業員が描く個人のキャリア
デザインの基盤を用意します。
そこで既存のジョブのカスタマイズを行います。
個人のキャリアデザインとジョブのカスタマイズの支援にはマネージャーの力だけ
でなく、AIも活用ありだと考えています。
リアルタイムで個人のデザイン結果を集約し、企業が求める人材ポートフォリオと
GAP分析の結果を個人にフィードバックするサイクルを構築しようと考えています。
結構コストがかかりそうなので、費用対効果は考えないといけませんが...
当然、もっと別のアプローチもあると思いますので、
皆様自身が設計したハイブリット型雇用システムの事例を教えてください。

今回のお話はこれで以上になります。