●『スキル標準の企業導入時のハードルとは? 〜その3』

        (株)スキルスタンダード研究所 代表取締役社長 高橋 秀典

【偏った意見を見抜く眼が必要】

筆者が目にしてきた中で、現場サイドからの意見でスキル標準導入を進めた場合、結果としてほとんどが経営戦略や事業計画などの企業の意志が入っていないものになっています。
具体的に言うと、現場から上がってくるのは「スキル診断ツールを使えばどうか」ということで、現場の人材はIT業界の中での自分の位置は、という個人視点にしかなっていません。
 
例えばITSSの場合、そこには自社のビジネスモデルや将来プラン、目標達成に必要な人材像などは一切ありません。
あるのは、IT業界を表現した11職種35専門分野7レベルの有名なフレームワークのどこに自分が位置するか、ということだけです。
 
もともとITSSのレベル3は、独力で何でもできるという公式定義なので、普通のIT企業ではかなり上位に位置する人材となります。
1度でも教育ベンダなどの提供しているスキル診断ツールを使えば分かりますが、レベル3以下にほとんどの人材が位置づく事実を突きつけられて、現場は急速に興味を失うのです。

iCDの場合も、まずそのまま使い断してみて現状を把握するという方法を取ってしまうことをよく耳にします。
iCDは、ユーザー企業であってもIT企業であっても、またどんなビジネスモデルであっても使えます。
言い方を替えれば、個々の企業がそのまま使えるはずもないということです。
自社にとって余計なものが多く詰まっています。その中で何かを計っても意味がないのは自明の理です。
 
以上のことをやってしまうと、言うまでもなく、後で困るのは人材育成担当者です。
始めたものを途中でやめられない、改善するにしても方法がわからない、とりあえずこのままいくか、ということになりがちです。
これでは、とてもスキル標準を効果的に使ってっているとは言えません。
企業に導入するのですから、企業視点の考え方が主体とならなければ、仕組みとして成り立ちませんし、継続して活用することもできません。
 
導入を推進する方は、スキル標準の中身をよくわかっているということではなく、活用の意義・目的を理解し、自社の戦略を基にしてトップや社員に説明でき、また質問に答えることができないといけません。まさしく、企画力と実践能力、そして使命感が求められるのです。