●『DX推進に向けた人材戦略はiCD & ITSS+を有効活用すべき! ~その2』

        (株)スキルスタンダード研究所 代表取締役社長 高橋 秀典

DX推進の必要性が明確になりつつあります。過去の延長線上にはない世界が見えてきました。
現実になってから、さてどうしようかと考えるのでは遅すぎます。
しかし、そうはいっても現状は問題なく守らなければいけない、という現実もあります。
そのためには、単なる見える化だけではなく、戦略的にiCD、ITSS+を活用する必要があります。

【iCDの限界とITSS+】

iCDは、タスクディクショナリの構成を見ると、ウォーターフォールを基本としていることが一目で分かります。
それだけで、DX技術に対応するのは難しいことをお分かりいただけると思います。

つまり、
   「iCDだけでは今後の人材戦略には使えない」
ということがはっきりしています。

先で理由を解説しますが、AIやデータサイエンスなど今後の中心になっていく技術をタスクで表現するのは難しく、
仮にできたとしてもミスリードする危険性が大きいと言えます。

また、出来上がったコンテンツでタスク遂行力チェックやスキルチェックをして、
ギャップから育成計画を作成していくような旧来の代物ではないということです。
そういった今までのやり方にこだわっていてはDXを推進することはできません。

そこで経済産業省、IPAは「ITSS+」に活路を見出しました。
ネーミングに関しては賛否が分かれますが、ITSSとはまったく別物になっています。
今までのITSSの職種の横に並べて・・ということではないことを理解する必要があります。

ITSSからiCDに至るまでのスキル標準の基本的な考え方は、従来のIT投資を基本としています。
対して今後必須になるDX時代は攻めのIT投資が重要となります。
スピード重視や、ビジネス部門が中心になって進めるパートナーも一体となる組織化などに重点が置かれます。

iCDは、ユーザー企業、ITサービス企業、また様々なビジネスモデルの企業であっても活用できるようになっています。
言い方を変えると、どの企業にもそのままで使うことはできません。
素材として揃っているコンテンツであって、それを材料に自ら組み立てるために用意されているものです。
意志を持って企業や組織の将来計画を基に「頭を使って」構築します。
To Beの姿を論理的、また客観的に表現できる数少ない方法の一つだと言えます。

しかしながら、iCDで全てをカバー出来るわけではありません。
タスクの並びを見ると2つの特徴に気づく方も多いと思います。

一つ目について、まず筆者が現在のiCDの基本構造を作ったのは2004年ですが、その時はタスクと呼ばず
ファンクションと言っていました。
まさに、機能として定義していたわけです。
何かを設計する場合、機能的には「設計」と表現できます。
業界が異なるシステムの設計、バッチ系の設計、Web系の設計、データ構造の設計、
そしてDX関連でいうとAIを用いたユーザー向けのクラウドシステムの設計。
設計の前にそれぞれ修飾子をつけると識別できますが、機能的には「設計」に変わりはありません。
特にDX技術について同じように表現すると、いわずもがなミスリードにつながります。

二つ目は、タスクはコンテンツの特徴としてウォーターフォールに見える構成になっています。
ITSSやUISSの考えを基にしているわけですから、当然このようになってしまうわけです。
先ほどの機能的表現の混乱だけではなくて、DXの主流であるアジャイル開発がうまく表現できないことになります。
無理やり表現しようとするとウォーターフォールのタスクと同じような定義となってしまい、埋没してしまいます。
この状況を回避するために、ITSS+として別途定義するのは自然な流れだと言えます。

iCDの中にもデータサイエンスやIoTが定義されていますが、タスクとして一体化しているのではなく、
新たに「領域」を設けて従来のiCDとは一線を画してあり、当然使い方も異なります。


【iCD と ITSS+ をどう使うか】

まとめると次のようになります。

 ・iCDは現行業務、及びその延長線上にある将来の業務を表すのに適している
 ・iCDだけではDX技術への対応が不可能である
 ・DXについてはITSS+で補完する必要がある

では、どのように補完するのでしょうか。

ITSS向けの活用プロセスは、筆者が2004年に策定しましたが、以来UISS、CCSFと引き継がれ、
現在はiCDの活用プロセスとして正式採用されています。
そのiCDの活用の流れをベースにし、タスク役割定義のタイミングで、
新たにITSS+の定義群などを活用することを考えることがDX対応の早道になります。

役割はタスクの集合体ですが、策定の仕方は企業のタスク構造(To Be)を構築してから役割として分担していく
という手順です。
この全体のタスク構造構築時にDX技術のタスクが入り込んでしまうとミスリードとなってしまい、
うまく構造化できないということになります。
理由は先に述べた通りですが、役割を策定した後に、その役割に対してITSS+の定義体などを使ってDX技術を
補完していくことは、それほど難しくなくミスリードを防ぐことができます。