●『スキル標準の歴史とiCD & ITSS+ ~その5』

        (株)スキルスタンダード研究所 代表取締役社長 高橋 秀典

【iCDの限界とITSS+ (続き)】

先回は今後のDX推進のために、どうiCD&ITSS+を位置づけるかをお話ししました。
今回も引き続き、それらをより深く理解いただくところから入ります。

iCDは、ユーザー企業、ITサービス企業、また様々なビジネスモデルの企業であっても活用できるようになっています。
別の言い方をすると、どの企業にもそのまま使うことはできません。
素材として揃っているコンテンツであって、それを材料に自ら組み立てるために用意されているものです。
意志を持って企業や組織の将来計画を基に「頭を使って」構築します。
To Beの姿を論理的、また客観的に表現できる数少ない方法の一つだと言えます。

しかしながら、iCDで全てをカバー出来るわけではありません。
タスクの並びを見ると2つの特徴に気づく方も多いと思います。

一つ目について、まず筆者が現在のiCDの基本構造を作ったのは2004年ですが、
その時はタスクと呼ばずファンクションと言っていました。まさに、機能として定義していたわけです。
何かを設計する場合、機能的には「設計」と表現できます。
業界が異なるシステムの設計、バッチ系の設計、Web系の設計、データ構造の設計、
そしてDX関連でいうとAIを用いたユーザー向けのクラウドシステムの設計。
設計の前にそれぞれ修飾子をつけると識別できますが、機能的には「設計」に変わりはありません。
特にDX技術について同じように表現すると、いわずもがなミスリードにつながります。

二つ目は、タスクはコンテンツの特徴としてウォーターフォールに見える構成になっています。
3スキル標準、特にUISSの考えを基にしているわけですから、当然そのようになってしまうわけです。
先ほどの機能的表現の混乱だけではなくて、DXの主流であるアジャイル開発がうまく表現できないことになります。
無理やり表現しようとするとウォーターフォールのタスクと同じような定義となってしまい、埋没してしまいます。
この状況を回避するために、ITSS+として別途定義するのは自然な流れだと言えます。

iCDの中にもデータサイエンスやIoTが定義されていますが、タスクとして一体化しているのではなく、
新たに「領域」を設けて一線を画してあり、当然使い方も異なります。

【iCD と ITSS+ をどう使うか】

DX推進への取り組みについて、次のような2つの形態が考えられます。

 ・デジタル技術、データを活用し従来の事業や業務を大きく変革
  ビジネストランスフォーメーションであって、従来の事業エリアの変更や新規事業とは異なる。

 ・スマート製品からデータを収集/分析し、新たな適用分野、新規事業の推進
  従来とは異なり、顧客ターゲット、収益源、提供経路を変革する。

今後は、「いいものを作れば売れる」ではなく、顧客の動向をいち早く察知して購買行動につなげることが重視する
カスタマー・エクスペリエンス(CX)戦略が重要となります。

iCDの活用法は「Task Oriented Approach」であり、全体のタスク構造を求めた後で担当タスクの範囲で役割分担していくというものです。
また、iCDを活用することで、既存ビジネス、および将来目標をタスク構成で表すことが可能となり、次の利点があります。

 ・人ではなく組織機能視点での目標達成に必要なタスク推進力を明示

 ・目標に対する客観的過不足の数値化

 ・環境変化や戦略変更に応じた素早い再構築が可能

これらは、iCDの特性を活用し、主力サービスを堅持することにつながります。

~その6につづく 次回はITSS+の使い方について説明します。