●「企業訪問がもたらす気づきとつながり」
特定非営利活動法人 スキル標準ユーザー協会
スキル標準活用グループ 担当理事 松本 道典
前回は、情報交流委員会の名物企画である「企業訪問」をご紹介しました。今回は、2025年6月に福岡で開催された企業訪問の様子と、そこから得られた成果についてお伝えします。
企業訪問は、単なる情報収集の場ではありません。実際に企業の現場に足を運ぶことで、企業の歴史、経営ビジョンや文化、働く人々の価値観を知り、それらの空気感にも触れることができる貴重な機会です。会議室での議論では、導入したスキル標準体系の課題や構想に焦点が当たりますが、現場での体験は、理論や制度の理解を深めるだけでなく、実践的な知恵や工夫の必要性を肌で感じることができるのです。
2025年6月26日、福岡で開催された第39回情報交流委員会では、企業訪問を中心としたプログラムが組まれました。
初日は博多市内で委員会を開会し、翌日(6月27日)は、博多駅から電車を乗り継ぎ、キリンビール福岡工場を訪問しました。
訪問先では、「工場だけの特別体験。キリン一番搾り おいしさ実感ツアー」に参加しました。ビールの歴史や製造工程を臨場感ある映像で学び、さらに発酵過程にある麦汁ろ過槽や貯蔵タンクの説明を受けることで、ものづくりの現場を深く理解することができました。麦芽やホップの味や香りを体験し、一番搾り麦汁と二番搾り麦汁の飲み比べを行う中で、理論では捉えきれない品質の違いを五感で感じ取ることができました。
さらに、ブルワリードラフトマスターという社内資格を持つスタッフによる解説を受けながら、3種類のビールを試飲しました。単にビールを味わうだけでなく、スタッフの誇りと専門性が込められた説明を通じて、品質に対する徹底した姿勢や企業文化の奥深さを実感する機会となりました。製造現場における高い技術力と、お客様志向を徹底的に追求する姿勢が、参加者の心に強く残りました。
参加者の言葉からも、その熱量が伝わってきます。
「製造現場の工夫や品質管理の徹底ぶりを目の当たりにし、企業文化の深さを感じました。資料では伝わらない"熱量"がありました。特に、スタッフの説明に込められた誇りが印象的でした。このような現場にIT機能が支援されているのですね。」
「前日のiCD活用事例を聞いたことで、自社での導入に向けた具体的なイメージが湧きました。他社との比較も非常に参考になりました。企業訪問へ向かう車内がグループディスカッションとなり刺激的でした。」
「委員会での議論と、企業訪問での体験でつながりが一層深まりました。こうした機会があるからこそ、設計コンセプトの本質に触れられるのだと思います。懇親会での交流も、今後の連携につながる貴重な時間でした。」
こうした企業訪問の機会を通じて、スキル標準体系の考え方は、IT部門に限らずどの部門にも共通する「タスク」と「スキル」に基づいているのだと改めて再認識されます。また、各社の事業ミッション、それを実現するためのIT機能、そしてその目的を果たすためのIT人材育成の仕組みまでを一連の流れとして学ぶことができました。福岡での訪問は、その設計コンセプトをより深く理解するきっかけとなりました。
情報交流委員会は、企業同士が経験と知見を持ち寄り、互いに学び合うことができる貴重な場です。制度の導入を検討中の方も、すでに運用し改善を模索している方も、ぜひ一度ご参加ください。異業種だからこそ得られる知見を、自社に持ち帰ることができます。