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認定コンサル コラム 第26回

創造的なIT人材の育成が重要な時代

斉藤 実(認定コンサルタント)

 リーマンショック以後、先進国需要が牽引してきた世界経済の成長が鈍化し、中国やアジア圏の台頭などグローバルなビジネス競争の時代となった今、我が国の企業にとって、これまでの右肩上がりの時代の成功モデルに依存した安定成長は先行きが不透明となり、今後の継続的な発展・成長のためには、他社と差別化したオンリーワンの新たなビジネスモデルを創り出し、グローバル展開を見据えて、企業をたゆまず進化させていくことが必要な時代となりました。

 その急激な経済構造の変化の中で、ITの分野においてもスマートフォン、Webサービス、クラウド化など新たな製品、サービス、技術革新が進展し、成長分野が構造的にシフトするなど、ユーザー企業、ベンダー企業にかかわらず、生き残りをかけた企業統合、M&Aの大波を受けて、新たな企業成長の方向性を模索しており、それを支えるIT人材もまた役割を進化させています。

 これからのIT企業に必要だと言われる創造的なIT人材とは、グローバルでの俯瞰的な視野を持ち、IT分野で新サービスや、新製品、新ビジネスモデルを創造し、企業の新たな進化や成長を実現していける能力をもった人材と言われています。
 では、そのような創造的なIT人材の本質は何でしょうか。またその様な人材をどのようにしたら育成できるものなのでしょうか。

 そのヒントとして、最近出版された書籍、クレイトン・クリステンセンの『イノべーションのDNA』が参考になります。アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスやセールスフォース・ドットコムのマーク・ペニオフなど、現在の成功ビジネスモデルを創ったイノベータ達にインタビューして特徴を見出し、そこでは、「破壊的なイノベータ」達には特有の5つのスキルが見られるといいます。

 彼らは、まずは主体的にイノベーションに取り組む勇気(自らリスクをとる)を持ち、そして行動的なスキルとしての「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」を発揮して、それらを組み合わせて革新的なビジネスアイデアを導く認知的スキル「関連づけ思考」を持っているといいます。

 それに対して、大手企業に所属する経営幹部は、「分析」「企画立案」「行き届いた導入」「規律ある実行」の4つの実行力が秀でているとして、イノベータ達のDNAとは、得意とする能力分野が異なる事を見出します。

 また、同書では、「企業が従業員にイノベーティブなアイデアを求めるなら、採用の過程でイノベーションの潜在能力がある人材を選別しなくてはならない」といい、採用の段階から発見する必要性を説きます。
 さらにグーグルやアマゾンなどの例を上げ、イノベーティブな組織の中には創造的な人材を発見し、その能力を引き出す仕組みが存在していることを示します。
 そして、個人がイノベーションに取り組む方法、コンピテンシーについて解説し、そのフレームワークを組織やチームに適用する方法として「人材」「プロセス」「哲学」について解説しています。(出典『イノべーションのDNA』)

 この本は、IT分野に限らず、これからの不透明なグローバル経済の時代での、新たなビジネス創造に必須のイノベーション(変革創造)能力について、どのように開花させ育成するのか、とても興味深い多様な示唆を含んでいます。

 私が育成について現実的に感じることは、おそらく、これからの時代で企業の成長にとって不可欠だと言われる、こうした変革・創造をもたらす破壊的なイノベータ人材とは、組織の役割分担の中で、イノベータとしての資質・適性・考え方をもったある割合の人材達が必要であり、そうしたDNAを有する企業で採用され、組織の中で切磋琢磨し自らの能力に磨きをかけ、また実践ビジネスの中で創造的にチャレンジする機会を与えられることでさらに潜在能力が引き出され、何度かの失敗経験を乗り越え、精神的にも強くなり、新しいスキルやコンピテンシーを身につけ、少しずつ成功を体験して自信をつけ、チームで仕事をする中で人間的にも成長して、本物のイノベータ人材として実力を発揮できるようになり、やがて企業を牽引する創造的リーダー人材として、企業に発展と成果をもたらしていくことになるであろうと考えています。
 
 また、そこまで破壊的なイノベータが社内に今いなくても、どの企業にも変革・創造の素質をもったリーダー人材達はたくさん存在しているはずであり、それらの人材を発見し、いよいよ出番となる時代が来たことを自覚させ、イノベーション意識を高める教育を実施して後押しし、小さな変革・改善から責任を持ってチャレンジさせ、自社に適したビジネス創造を実現できるよう育て、徐々に組織を変えていくことも考えられるのではと思います。

 特にITの分野では、医薬やバイオの分野などと並んで、いま数ある産業分野の中でも特に日々新たな発見、進展があり、その成果は世界や人間社会への貢献性が高く、変化と進化に富んだやりがいのある産業分野の一つであるといえます。そこには、製品やサービス、産業や業界等の垣根を越えての新たなビジネスフュージョンが日々起こり、新たなアイデア、ビジネス、サービス等のイノベーションが生まれている熱い成長分野であるといえます。

 だからこそ、その夢のある成長産業を支えるIT人材達もまた、日々切磋琢磨であたらな進化を求められており、創造的なIT人材の育成が重要となっていくといっても過言ではありません。
 今後は、こうした創造的なIT人材の社会的な育成ニーズが更に増し、そうした人材の採用選抜方法と共に、中高大の学校教育からの育成のための新教育体系の構築がますます求められる時代に突入することになっていくと思います。

 私は、人材育成コンサルの実践の中で、そうした変革を望む企業経営者からの創造的人材育成のニーズの高まりを肌で感じており、これまでと違った様々な高度IT技術スキルの育成手法、ITSSやUISSなど各種スキル標準の進展にそったスキル認定・育成手法、新しい共通キャリア・スキルフレームワークに添った新たな効果的な育成手法、創造的なイノベータ人材の選抜採用手法と育成手法、組織を牽引するリーダーシップ人材へのヒューマンスキル育成、グローバル時代のコンピテンシー、人間力などの効果的な研修や人材育成手法等について質問され、切迫している企業の実ニーズに応えながら、日々の教育実践と改善を進めており、これからの時代で成果を出す人材育成手法を開発・提供していくことが真に求められている実需・実力志向の時代になってきたことを痛感するこの頃です。

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