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認定コンサル コラム 第17話

クラウド時代の人材育成

斉藤 実(認定コンサルタント)

◆世界の人材育成のトレンド
今年の5月のASTD2011(米国人材開発機構)の主要テーマの中では、私は特に「タレント・マネジメント」や「効果測定」「パーソナルスキル開発」に着目しています。
(※「タレント・マネジメント」とは:人材の採用、選抜、適材適所、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の人材マネジメントのプロセス改善を通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、現在と将来のビジネスニーズの違いを見極め、優秀人材の維持、能力開発を統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること(人材マネジメント協会 SH RMの定義より))

◆「ハイ・コンセプト」の考え方
また、ダニエル ピンクは、著書 「ハイ・コンセプト?「新しいこと」を考え出す人の時代?)の中で、これからのコンセプチュアル時代では、「デザイン」「物語」「全体の調和」.「共感」「遊び心」「生きがい」の6つの感性を持つ人が創造的な仕事を行うとしています。
「ハイ・コンセプト」とは、パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力、などであり、人材育成の標準的なモデルとして我々にもなじみが深い、ロバート・カッツ・モデルで言う「概念化能力」(「コンセプチュアルスキル」や「創造力」)の領域の能力といえます。

◆IT人材のニーズ変化
●IPAの「IT人材白書2010」では
・企画人材 ↑
・開発人材 ↓
・運用人材 ↑
「企画」「運用」人材のニーズが上がり、「開発」人材ニーズは下がるとしています。

●IPA 「クラウド時代の人材育成検討委員会報告書」では
クラウトでの中心的な役割を果たす技術を次のように纏めています。
・SOA/・WebAP(HTML5など)/・Webサービス(SOAP、RESTなど)/・オープンソース/・サービスマネジメント/・システム間連携技術/・セキュリティ/・センサー、携帯端末とクラウド連携/・データベース(noSQL)/・ネットワーク(IPv6、GW)/・ネットワークのQoS( バックボーン冗長化含む)/・ブラウザ、ホームページ、記述、表現技術/・マルチテナント/・仮想化技術(サーバー、ストレージ、ネットワーク)(プーリング、プロビジョニング)/・外部認証(OpenID、OAuth、SAMLなど)/・業務運用管理技術/・大量データ処理技術/・複合イベント処理技術(CEP)/・分散処理技術/・分散システム統合管理技術
クラウド技術人材とは、これらのクラウド系技術知識を併せ持つとともに、ITスキル標準のキャリアフレームワークをイメージして言えば、いくつかの職種、専門分野のスキルレベルをまたがって、マルチスキルとして網羅している人材像が求められると予想しています。

●経済産業省「クラウド時代に併せたIT人材の育成について」、
「クラウト・SaaS時代に求められる人材像(案)」として
・ストラテジスト、マーケティングなど戦略系の人材、及びサービスを組み合わせ、
トータルなソリューションを実現するアーキテクトは需要と重要性が増す。
・クラウド・SaaS ベンダーでは、技術的に高度なITスペシャリスト、カスタマーサービスの人材が必要になる。
・反面、開発主体の人材(プロジェクトマネージャー、アプリケーションスペシャリストなど)の需要は減る。
とされています。

●クラウド化で大きく変わるIT営業スタイル
従来の「SI営業」時代から、今後の「クラウド営業」時代に移行するとき
<売上げサイズ>は「SI営業」時代の巨大案件や利益大のものは減少し、「クラウド営業」時代では小規模案件、利益小となります。
<営業スタイル>は、何度も足を運んでのコンサルタント営業、論理思考の営業スタイルから、クラウド時代になると、長期信頼、安定をうるため、顧客との良好なコミュニケーション、共感性、信頼感主体の営業スタイルにシフトし、またクラウドを使って顧客にコンタクトするようになり、アウトバウンドでの営業のスタイルなども増えてくることになります。
このときの、営業マンのスタイルは、これまでSI営業の中心とされた「コンサルタント営業」スタイルは大口案件では引き続き残ることになりますが、徐々に「クラウド営業」スタイルへシフトすることになります。
<提案内容>は、SI営業では「システム提案」だが、クラウド営業では「ビジネスモデル提案」に変わります。
上記の開発人材のニーズ動向と営業人材のシフトを合わせて見ると、IT人材全体での大きな職種シフトが起きることが見えてきます。
逆に、こうしたクラウド時代の大きなIT人材ニーズの動きを掴み、チャンスととらえて、技術開発分野でニーズが大幅減少する技術人材から、逆にマルチスキルが必要な、クラウド営業人材にシフトする流れも検討され初めています。
また、企業統合やM&A でのタイミングに合わせて、IT分野における前向きな適材適所配属、技術系人材や営業系人材の最適化配置、タレント・マネジメントの人事を実現していくというのは、人材のモチベーションアップにもつながることになり、企業にとって、非常に効果的な施策と考えられます。
いつの時代でも、企業を伸ばしていくのは、やはり企業に最適かつ、優秀で前向きな人材です。

最後に、実際に、私が関わった人材育成事例からご紹介します。
●コンサルタント営業力は可視化できる。
ある大手通信系企業の人材を客観型の「営業力診断」で診断したところ、
上位得点者5人は、高業績者と全くイコールでした。
これによって、企業名や、ブランド、製品に依存しない、個人に属する営業力だけを可視化することに成功しました。
これを活用することで、高業績の営業人材を把握でき、営業人材の個別の強みと弱みが見え、必要な営業研修が実施できることになりました。

●クラウド営業人材のハイパフォーマーとは
クラウド営業人材のハイパフォーマー(高業績者)を実際に数千人に亘って調べたところ、コンサルティング営業人材の型とは異なり、営業力の中でも、「営業観」、「顧客観」、「業績観」、「リレーションシップマネジメント」、「セルフマネジメント」が高い人材であって、併せて、「感受性」、「情動性」が高く、「論理」より「共感性」をもち、人に人間的な配慮ができる人材であることが見えてきました。

●クラウド系アウトバウンド営業人材のハイパフォーマーとは
「協調性」が高く、「社交性」、「創造性」、「指導性」、「積極性」、「活動性」、「革新性」が高い外向的人材であり、コミュニケーションの高さと併せて「感受性」、「情動性」が高い人材であることが見えてきました。
まさに、「コンセプチュアル時代」に大事なビジネス要素といわれる「感性」、人から信頼される能力、人と円滑にコミュニケーションをはかる上で必要な能力「共感性」などが、すでに重要な時代となってきていると言えるようです。

●スキルレベルの高さには、コンピテンシーレベルの高さも必要
私は認定コンサルタントとして、また会社の業務の一環として、現在は、オフショア開発企業も含めて年間数万人のスキル診断を常時実施して、組織分析を行い、必要な研修を実施し、大手企業の技術者を育成するための技術スキル認定制度等の構築・運用を支援し、技術レベル認定コンサルタントの派遣も実施して、年間を通して、企業の業績の向上に役立つ人材育成施策や採用支援を行っています。
しかし、ITSSができて間もない7,8年前のころでは。ある運用系の大手企業で、ITSSの知識、スキルを客観診断で測定したところ、スキル熟達度レベル4以上となった人材がいた。一般的な平均レベルは2であったため、マネージャ候補ですか?と聞いたことがあります。
すると人事の方は、「怪訝そうな顔をして、彼はマネージャではありません。そういう引き合いもありません」と言う。そこで会わせてもらったところ、意味が理解できた。
コンピューターを打つスピードは超人並だが、下を向いたまま人と目を合わさず、コミュニケーションがとれない人物でした。
そのとき以来、私は、ITSSの知識、スキルレベルだけでは、実際のビジネスはできるとはいえない。技術レベル相当の人間力、ビジネスコンピテンシーの高さがあって初めて、その高い技術スキルレベルが発揮されるということを、強く意識し、様々なセミナーの機会を通して企業に伝え、企業へのスキル標準の導入時には、必ずスキル診断の実施と合わせて客観的なコンピテンシーチェックを同時に実施して、企業が最も必要としている、「ビジネスを伸ばす人材育成」の支援に役立てるようにしています。
こうした人材の「ビジネス能力の総合的な可視化を基にした客観的な人材育成」の手法は、すでに確立していて、企業毎、部署毎、ビジネス毎に異なる人材のハイパフォーマー類型をサーベイし、これによって組織の適材適所配属や最適育成を実施するこができ、適材適所のタレント・マネジメントの実践によって、社員のモチベーションも上がり、離職率が下がり、特に企業の経営者の方の納得感が高いと言われることがうれしい。今後さらに完成度を高めていくことに努力していきたいと思います。

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