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認定コンサル コラム 第11話

震災から学んだ事 〜人材育成制度に魂を入れる〜

青木 美代子 (認定コンサルタント)

3月に起こった大震災は日本の社会・経済システムを維持することの大切さや難しさを教えてくれました。また、非常時に対する認識と行動の違いにより、結果が大きく異なる事も様々な感情と共に理解しました。そして、社会インフラが壊滅した環境において人にとって本当に大切なものを改めて考えさせられました。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、「釜石市の防災教育の結果、釜石市内の児童・生徒の99.8%が津波から無事逃げ延びた奇跡」というトピックスが話題となっています。
津波に襲われた他地区においてもハザードマップを作成し、防災教育を実施していますが、悲しい事に多くの犠牲者が出ていると言われています。何処が違うのでしょうか。

釜石市では、群馬大学大学院 災害社会工学研究室 片田敏孝教授と『災害文化醸成プロジェクト』を推進し、ハザードマップや非常持ち出し品など防災に対する各種情報の整備・発信をはじめとし、各種の施策や体制整備と防災教育を実施しています。元々津波に対する防災意識が高い三陸を中心とした地域の中で、釜石市が注目されているのは、その教育により、住民一人一人の防災に対する知見・行動レベルを地域全体で高度化した事にあると思います。

以下、産経ニュースの記事と群馬大学大学院 災害社会工学研究室のホームページを参考に釜石市の防災教育の特徴を整理します。
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釜石市の防災教育の特徴は次の点にあると考えます。
1. 児童生徒だけでなく保護者を通じ、地域社会までキチンと巻き込んでいる。
2. 児童生徒に対する防災教育が、基礎を徹底した後、児童生徒に自ら判断させるレベルに及んでいる。

1. 児童生徒だけでなく保護者を通じ、地域社会までキチンと巻き込んでいる。
逃げたくない人にどう対応するか、防災に関する講演会に来ない人にどうやって教育をするかが問題になっていた。これに対し、相手の心に寄り添いながら別の観点で納得してもらう対応をしている。
例えば、逃げたくないお婆さんには、離れて住む子や孫など大切な人からの観点で避難することを納得してもらう、防災に無関心な母親には、「今度、津波が来た際、あなたのお子さんは自分で命を守れますか」の質問で防災活動への姿勢を変えてもらうなど。さらに、防災について各家庭での話し合いを進め、地域全体へ浸透させている。

2. 児童生徒に対する防災教育が、基礎を徹底した後、児童生徒に自ら判断させるレベルに及んでいる。
次の3原則を徹底している。
原則1 「想定に、とらわれるな」
市教育委員会と共に各地の津波浸水状況と避難経路を想定したハザードマップを作成・配布している。防災教育では、ハザードマップの配布と津波が遡上してくる様子や繰り返し波が襲ってくる様子など基本的知識を教えている(守)。これに留まらず、ハザードマップに対し児童生徒と保護者が一緒に津波避難場所を点検して大きな地図へ結果を集約し、さらに各自が見つけてきた津波避難場所を書き込むなど自分たちで考え行動するレベルにまで落とし込んだ内容となっている(破)。この基本の徹底の上に、想定外へ対処する考え方・姿勢を教えている(離)。つまり、教育内容が「守破離」の「離」のレベルに達している。
原則2 「最善を尽くせ」
津波はどのような動きをするかは想定できない部分があり、その状況下で最善の避難行動を取ることが重要となる。
原則3 「率先避難者たれ」
まず自分の命を全力で守ること。「必死で逃げる姿」が周囲への最大の警告になる。
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釜石市のように「命を守る教育」ほど喫緊ではないにしろ、IT人材育成は、組織および個人の将来に関わる重要な課題です。

私たち人材育成コンサルタントにお聞かせ頂くケースに、「人材育成制度は作ったけれど機能していない。効果が出ていない。」といったご相談が最近増えています。このようなケースでは、次のような状況を多く見受けます。

(1)人材育成制度が腹落ちしていない
会社から策定した制度の説明があったが、社員それぞれが「自分と会社を将来につなぐもの」として腹落ちするレベルに至っていない(「守」段階)。このため、取組姿勢が弱い。
(2)全社員を巻き込めていない
人材育成は幹部、管理職、担当といった各層がそれぞれの分掌範囲に責任をもち、全員で推進する環境、つまり人材育成の風土が重要となる。人材育成制度構築/見直しの直後は致し方無い面もあるが、一部の方だけが関与し、大半の方は関与しておらず、全体活動となっていない。

つまり、「形だけ作ったが、魂が入っていない」状況となっています。
この状況に対して、釜石市の防災教育の取組には大きなヒントがあると感じます。

人材育成制度に魂を吹き込む事は、コンサルタントにとっても実に大変で、「重き荷を背負うと遠き路を行くが如し、急ぐべからず」の感があり、ましてや実施主体のお客様のご苦労は計り知れないものと考えます。
しかし、「釜石の奇跡」は、人材育成に携わる私たちに「光」と大きなヒントを下さったと感じます。

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